1.育成就労制度とは

育成就労制度は、我が国の労働市場において人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、外国人材を計画的に育成し、長期的な戦力として確保することを目的に、2024年(令和6年)の法改正により創設されました。
本制度は、これまでの「技能実習制度」を抜本的に見直し、発展的に解消したものです。技能実習制度が国際貢献を主目的としていたのに対し、育成就労制度は「人材確保」と「人材育成」を明確な目的として掲げています。
2027年(令和9年)4月1日より施行され、外国人材の受入れが開始される予定です。
2.育成就労制度の概要
育成就労制度の最大の特徴は、3年間の就労を通じて、専門的な技能を要する在留資格「特定技能1号」水準の技能を有する人材を育成するという点にあります。

3.育成就労外国人について

育成就労外国人とは、日本の深刻な労働力不足を支える「将来の戦力」として、3年間の計画的な就労を通じて「特定技能1号」水準の技能修得を目指す外国人のことです。従来の「技能実習生」が開発途上国への技術移転(国際貢献)を主眼としていたのに対し、新制度下の外国人は、日本国内での人材確保と育成を目的としたキャリア形成の主体として明確に位置づけられました。
技能実習制度からの大きな転換点として、特定技能への円滑な移行と、一定の要件下で認められる「本人意向による転籍」の導入が挙げられます。帰国を前提としない長期的なキャリア形成の道筋が整えられたことで、外国人は日本社会の一員として専門性を高めつつ、自らの意向で職場を選択できる柔軟性を得て、企業と共に長期的な成長を目指すことが可能となりました。
育成就労外国人の要件
育成就労外国人として来日・就労するためには、以下の基準を満たしている必要があります。
- 年齢・健康状態・素行
育成就労開始時点で18歳以上であり、犯罪歴がなく素行が善良であること。
また、安定的・継続的に業務に従事できるよう、医師の診断により健康状態が良好であると証明されていること。 - 日本語能力(入国時)
原則として日本語教育の参照枠A1相当以上(日本語能力試験N5等)の合格、または認定日本語教育機関等での100時間以上の講習受講が求められます。
- 送出国の推薦
監理型育成就労の場合、母国の公的機関等から「適切に選抜された人材である」という推薦状を受けている必要があります。
育成就労外国人と外国人技能実習生の違い
最も大きな違いは制度の「目的」です。これまでの技能実習生は「国際貢献(技術移転)」が目的でしたが、育成就労外国人は日本の労働力不足を解消するための「人材確保・育成」を目的としています。そのため、特定技能制度との連携が非常に強くなっており、外国人の人権保護の観点から「転籍の制限」も大幅に緩和されました。
育成就労制度は特定技能制度との連続性を重視して設計されているため、3年間の育成期間を経て、そのまま自社の主力メンバーとして定着してもらうことが前提となっています。
育成就労制度と外国人技能実習制度の要件比較
| 比較項目 | 育成就労制度 | 技能実習制度 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 特定技能1号水準の人材育成・確保 | 開発途上地域等への技能移転(国際貢献) |
| 在留期間(最大) | 原則3年間 | 最長5年間(1号・2号・3号の合計) |
| 受け入れ可能な職種 | 特定技能の分野に対応した育成就労産業分野 | 主務省令で定める移行対象職種(91職種168作業) |
| 入国時の日本語 | 原則A1相当(N5等)以上が必須 | 介護などの一部職種を除き原則不要 |
| 転籍(就労先の変更) | 一定要件下で本人意向による転籍が可能 | 原則不可(不適切な事案等の例外のみ) |
| 目標とする試験 | 特定技能1号水準の試験(技能3級・日本語A2) | 各段階ごとの技能検定(基礎級・3級・2級等) |
| 特定技能への移行 | 良好な修了により評価試験が免除 | 実務経験等による免除はあるが連続性が低い |
特定技能1号への移行要件
3年間の育成就労を良好に修了し、以下の目標を達成することで、特定技能1号への移行時に必要な評価試験(技能・日本語)が免除されます。
- 技能水準: 育成就労の目標である技能検定3級相当(または育成就労評価試験・専門級)に合格すること。
- 日本語能力: 特定技能1号で求められるA2相当以上(日本語能力試験N4等)に合格すること。
この仕組みにより、企業様は自社の業務を熟知した優秀な人材を、育成就労(3年)+特定技能1号(5年)=最長8年、さらに特定技能2号(期間制限なし・家族帯同可)へと、継続して雇用し続けることが可能です。
4.育成就労実施者(受け入れ企業)について

育成就労制度の本質は、深刻な労働力不足への対策としての「人材確保」と、専門技能を授ける「人材育成」の両立にあります。
これに伴い、育成就労実施者(受け入れ企業)には適切な育成体制が求められます。受入れ人数枠の制限や、育成就労責任者・指導員・生活相談員の選任といった基本要件は、従来の技能実習制度の水準が概ね継承されました。
一方で新制度独自の要素として、特定技能制度との連携を強めるための「分野別協議会」への加入や、外国人材が目標とする日本語能力(A2相当)に到達できるよう、100時間以上の学習機会を提供する支援義務などが新たに課されています。
育成就労計画の認定制度
外国人材が着実にスキルアップできるよう、本制度では一人ひとりの育成内容を記した「育成就労計画」を認定制としています。計画書には、最長3年の期間内で従事する業務の詳細、修得を目指す技能検定の種類、日本語能力の目標などを具体的に定める必要があります。受入れ企業は、外国人材の入国に先立ち、これら3年分の育成プログラムを策定しなければなりません。作成された計画は、外国人育成就労機構による厳格な審査を経て認定を受ける必要があり、この認定が適正な受入れの前提条件となります。
認定を受けるための主な要件
受入れにあたって、企業様がまず確認すべき主要な要件は以下の5点です。
- 指導・相談体制の整備
育成就労を統括する「責任者」、5年以上の経験を持つ「指導員」、生活をサポートする「生活相談員」を選任する必要があります。
- 日本語日本人と同等以上の適正な待遇能力(入国時)
報酬額は日本人と同等以上とし、技能の習熟に応じた昇給等の格付けが必要です。また、1人当たり4.5㎡以上の寝室面積を確保した適切な宿泊施設の提供が求められます。
- 日本語学習の支援義務
外国人が特定技能水準(A2相当)に到達できるよう、認定日本語教育機関等で100時間以上の講習を受講させるための費用負担や環境整備を行う義務があります。
- 法令遵守と健全な経営基盤
社会保険・労働保険への加入や税金の完納、過去1年以内に同種業務の日本人をリストラしていないこと、債務超過の状態にないことが求められます。
- 分野別協議会への加入
従事させる業務が属する「育成就労産業分野」の分野別協議会に加入していることが必要です。
転籍制限の緩和と初期費用補填
育成就労制度では、一定の要件(1〜2年の就労、技能・日本語の試験合格)を満たした場合に、本人意向による転籍が認められます。 企業様が最も懸念される転籍時の経済的リスクを軽減するため、転籍先の企業は、転籍元の企業が支出した初期費用(入国時渡航費や送出手数料等)の一部を補填(返金)する仕組みが導入されました。これにより、育成に投資したコストが保護され、企業間の公平性が保たれます。
育成就労実施者と実習実施者の比較
| 比較項目 | 育成就労実施者(育成就労制度) | 実習実施者(技能実習制度) |
|---|---|---|
| 役割と目的 | 将来の特定技能1号の育成・確保 | 開発途上地域等への技能移転(国際貢献) |
| 人数枠の拡大 | 優良な実施者は受入れ人数枠が大幅に拡大 | 優良な実施者には一定の人数枠拡大あり |
| 転籍の受入れ | 一定要件下で本人意向の転籍者を受入れ可能 | 原則不可(不適切な事案等のみ) |
| 転籍時の初期費用の精算 | 本人意向転籍の際、新旧企業間で費用を補填 | 規定なし |
| 日本語教育 | A2相当合格に向けた講習受講の支援義務 | 努力義務 |
優良な育成就労実施者のメリット
技能試験の合格実績や指導体制が優れていると認められた企業様は、「優良な育成就労実施者」として認定されます。 優良認定を受けると、育成就労外国人の受入れ人数枠が、基本枠の約2倍〜3倍(常勤職員の最大3/10〜9/20)まで大幅に拡大されます。多くの人材を長期的に確保したい企業様にとって、非常に強力なインセンティブとなります。
5.受け入れ可能な人数枠について
育成就労制度では、外国人材への適切な指導と保護を担保するため、受入れ企業(育成就労実施者)の「常勤の職員数」に応じて、受け入れられる人数の上限(人数枠)が定められています。
育成就労外国人の受入れ人数枠 一覧表
受入れ企業が「優良な育成就労実施者」として認定されると、受入れ枠は基本枠の約2倍に拡大されます。さらに、一定の要件を満たす地域(指定区域)では、最大約3倍の「地方特別枠」が適用されます。
| 常勤の職員総数(※1) | 基本人数枠 | 基本人数枠 + 優良人数枠 | 基本人数枠 + 優良人数枠 + 地方特別枠(※2) |
| 1人 | 3人 | 4人 | 5人 |
| 2人 | 6人 | 7人 | 8人 |
| 3人 | 9人 | 10人 | 11人 |
| 4人 | 9人 | 12人 | 13人 |
| 5人 | 9人 | 15人 | 16人 |
| 6人 ~ 30人 | 9人 | 18人 | 19人~27人 |
| 31人 ~ 40人 | 12人 | 24人 | 36人 |
| 41人 ~ 50人 | 15人 | 30人 | 45人 |
| 51人 ~ 100人 | 18人 | 36人 | 54人 |
| 101人 ~ 200人 | 30人 | 60人 | 90人 |
| 201人 ~ 300人 | 45人 | 90人 | 135人 |
| 301人以上 | 職員総数の3/20 | 職員総数の3/10 | 職員総数の9/20 |
※1 常勤の職員の定義: 社会保険の被保険者等、継続的に雇用されている職員を指します。なお、受け入れている「育成就労外国人」や「技能実習生」は職員数にカウントできません。
※2 地方特別枠:優良な実施者が、大都市圏以外の「指定区域(いわゆる地方)」で、優良な監理支援機関のサポートを受けて受入れを行う場合に適用されます。
優良な育成就労実施者の要件
高い育成能力と適切な受入れ体制が認められた企業様は、「優良な育成就労実施者」受入れ人数枠が基本の約2倍(地方特別枠では最大3倍)に拡大されるなどの優遇措置が受けられます。
この認定は、客観的な指標に基づいた「点数制(ポイント制)」によって判断されます。主務省令で定められた評価項目ごとに配点が設定されており、4つのカテゴリーの合計点数のうち、6割以上の得点を取得することが認定の条件となります。これにより、単なる形式的な要件確認ではなく、実際の人材育成の実績や待遇面が正当に評価される仕組みとなっています。
評価の対象となる4つのカテゴリーは以下の通りです。
- 技能・日本語能力の修得実績
3年目の目標(技能検定3級相当・日本語A2相当)および1年目の中間評価の高い合格実績に加え、自社社員の試験委員派遣や試験会場の提供といった試験実施への協力実績が総合的に評価されます。
- 適切な指導・相談体制
育成就労責任者、指導員、生活相談員の3役が3年ごとに養成講習を適切に受講し、5年以上の実務経験を持つ指導員を配置するなど、確実な育成・支援体制を整えていることが評価対象となります。
- 外国人材の待遇
技能の習熟度に応じた適切な昇給実績や、全実習生への個室提供、冷暖房・ネット環境の完備といったプライバシーに配慮した良好な住環境の整備状況が重視されます。
- 法令遵守・失踪防止
過去3年以内に改善命令を受けていないことや社会保険・租税の完納などのコンプライアンス遵守に加え、企業の責めに帰すべき失踪者を発生させていない安定した管理体制が厳格にチェックされます。

6.受け入れ可能な分野・職種について
育成就労制度では、原則として特定技能1号の対象となっている特定産業分野と一致する以下の16分野において受け入れが可能です。これにより、育成就労から特定技能1号へのスムーズな移行が制度的に担保されています
介護 | ビルクリーニング | 工業品製造業 |
建設 | 造船・舶用工業 | 自動車整備 |
航空 | 宿泊 | 自動車運送業 |
鉄道 | 農業 | 漁業 |
飲食料品製造業 | 外食業 | 林業 |
木材産業 | 資源循環 |
業務区分
各分野の中には、従事する具体的な仕事の内容を定めた「業務区分」が設定されます。
育成就労では、将来の特定技能への移行を見据え、同一の業務区分内であれば、より多角的な技能を修得させることが期待されています。また、技能実習制度に存在した「周辺業務(1/3以内)」などの厳しい制限が緩和され、同一区分内の業務や関連業務への従事がより柔軟に認められるようになりました。
具体的にどの作業がどの業務区分に属し、どのような技能を修得すべきかは、各分野を所管する省庁が定める「分野別運用方針」によって詳細に規定されます。
業務構成と時間配分
育成就労制度では、実務時間の配分基準が再編され、技能実習制度に存在した「周辺業務」の厳格な制限(1/3以内など)が事実上廃止されました。
- 必須業務(1/3以上)
技能検定3級相当の合格のために不可欠な中核業務です。全就労時間の3分の1以上を充てることが義務付けられています。
- 安全衛生業務(1/10以上)
現場での安全確保や教育に関する業務で、全就労時間の10分の1以上の実施が必要です。
- 関連業務・その他
上記2つ以外の時間は、同一業務区分内の業務や、必須業務に関連する業務に従事させることができます。技能実習制度のような「周辺業務は1/3以内」といった厳しい時間制限はなくなり、現場の実態に合わせた柔軟な運用が可能となりました。
- 必須業務(1/3以上)
技能検定3級相当の合格のために不可欠な中核業務
- 安全衛生業務(1/10以上)
現場での安全確保や教育に関する業務
- 関連業務・その他
同一業務区分内の関連業務
7.当組合(監理支援機関)によるフルサポート体制
監理団体から監理支援機関へと役割が進化する当組合は、制度の目的である「人材育成」と「人材確保」を高い次元で実現するため、企業様が「優良な育成就労実施者」として認定を受け、優秀な特定技能人材を長期にわたって確保できるよう、以下の体制で全面的にバックアップいたします。
優良認定の取得支援
育成就労制度の最大のメリットを享受するためには、「優良認定」の取得が鍵となります。当組合は、認定基準に適合した「育成就労計画」の策定を支援し、企業様の受入れ体制を最適化します。
法令遵守サポート
育成就労制度では、従来の技能実習以上に厳格なコンプライアンスが求められます。当組合は、企業様が予期せぬ法令違反に問われるリスクを未然に防ぎ、健全な運営を維持できるよう伴走します。
母国語相談・緊急支援体制
育成就労外国人が十分に理解できる言語(母国語)による相談窓口を整備しています。SNSや通話アプリを活用し、気軽に相談できる環境を整えることで、孤立感による失踪やトラブルを未然に防ぎます。